変革期を迎えたレアル・マドリー

今、レアル・マドリーは変革期を迎えている。
ここで言う変革期とは、選手の入れ替えであり、監督の交代であり、それに伴うシステムの変更である。

そこで今回は、そんな銀河系軍団の変革期を色々な視点で捉えていこうと思う。

1. チームの若返り
レアル・マドリーは来期の王座奪還に向けて、着々と戦力補強案を立てている。
今期は既にサントスからFWロビーニョ、サンパウロから右サイドバックのシシーニョ、ローマから若手実力派FWカッサーノを獲得している。

これに加えて、来期は次のような選手が獲得候補に名を連ねている。
ズラタン・イブラヒモビッチ(ユヴェントス)
アシュリー・コール(アーセナル)
シャビ・アロンソ(リヴァプール)
ルーカス・ポドルスキー(1.FCケルン)
クリスティアン・ポウルセン(シャルケ04)
ラウル・ガルシア(オサスナ)

いずれも実力のある名プレーヤー達だ。
イブラヒモビッチについては、レアル・マドリーサイドが獲得否定のコメントを出しているが、一方では獲得したばかりのカッサーノとトレードするのではないかという噂までたっている。

レアル・マドリーは今までも“興味なし”的な発言をしておきながら、不意打ちよろしく大物プレーヤーをかっさらった経緯があり、イブラヒモビッチについても同様の手法で獲得を狙っている可能性がある。

そんなレアル・マドリーに対する批判はさておき、個人的にはカッサーノとのトレード案は奨励したい。カッサーノは確かに若手ながらも実力があり、ポテンシャルも計り知れない将来有望なプレーヤーだが、いかんせん性格に問題があるのだ。

一人の協調性の無さや、傲慢な態度はチーム全体に蔓延し、モラルの低下に直結する。酷なようだが、乱暴な言い方をすれば、プロとしてのモラルを取り戻しつつあるレアル・マドリーにカッサーノは邪魔なだけである。

カッサーノは唯一カペッロ(現ユヴェントス監督)だけがコントロール可能な諸刃の剣なのだ。

それゆえ私は、カッサーノがレアル・マドリーにとどまることに反対し、イブラヒモビッチの加入に賛成する。

イブラヒモビッチは長身で空中戦、ポストプレーを得意とする、今の銀河系にはいないタイプのFW。いわゆるセカンドトップ型のFWばかりがいるレアル・マドリーにとって、獲得できれば貴重な戦力になるのは間違いない。

その他、レアル・マドリーはセンターハーフの選手が乏しいので、名手シャビ・アロンソを是非とも獲得したいところだ。

イブラヒモビッチにしろ、アシュリー・コールにしろ、シャビ・アロンソにしろ、実力を持ちながらもまだ若い。ポドルスキーはこの限りではないが、伝統的に年齢層の高かったスター軍団が、彼らを獲得することで一気に世代交代する可能性がある。



2. 新監督ロペス・カロの采配
レアル・マドリーはここ数年、次から次へと監督の首を付け替えている。だが、監督が変わってもチームの状態は一向に回復の兆しを見せなかった。

ルシェンブルゴになってからは一時改善が見られたが、しばらくして再び絶不調に陥った。

監督が変わるだけで状態がよくなるなら苦労はいらないのだが、レアル・マドリーがシステムをいじった位では回復できないところまで腐敗していたのは事実である。プロとしてのモラルが明らかに欠如し、運動量も少なく、やる気があるのかどうかさえ疑わしい様だった。

それを象徴するかのように、昨年行われたヴェルディとの親善試合で0-3の大敗を喫した。欧州のトップチームがなすすべなく敗退する様を見て私は心底落胆した覚えがある。この試合では完全に足が動いていなかった。いくら過密なマネジメントで疲弊していようと、意地を見せてもらいたかった。あれではやる気なしと疑われても仕方が無い。(もちろん、過密なスケジュール自体にも問題がある)

そんな不振のどん底を這いずり回っていたレアル・マドリーだが、監督にロペス・カロが就任してからは明らかな改善が見られる。

まず、ルシェンブルゴ時代に比べて運動量が増えた。運動量が増えることでプレスが効くようになり、高い位置でインターセプトできるようになった。

ルシェンブルゴ時代のレアル・マドリーはゆっくりパスを回しながら時間をかけて攻めていた印象があったが、今のレアル・マドリーはボールを奪ってからゴールに殺到するまでの時間が非常に短い。

これにはポジショニングの良さも貢献している。適切なポジショニングをすることでダイレクトプレーは必然的に増えるからだ。

現代サッカーで重要といわれる攻守の切り替えの早さが、今のレアル・マドリーには戻っている。

加えて、ロビーニョが自信を取り戻したことも大きい。彼は鳴り物入りでレアル・マドリーに来てからうまく結果が出ずに伸び悩んでいたが、ここ最近はゴールを量産しており、本来のキレを取り戻している。

苦手と言われるセットプレーの守備にも改善が見られた。一般的にコーナーキックの守備はマンマークするのが普通だが、レアル・マドリーはゾーンマークで守備している。コーナーキックをゾーンで守るチームを私は他に知らないので、これには驚いた。

あえて流行ではないゾーンマークを選択したレアル・マドリーのセットプレーの守備は、以前より安定しているように見えるがどうか。

私は実際にロペス・カロがどんなことをしているのか見たわけではないが、こうした改善の背景には、彼が選手に徹底したフィジカル・トレーニングと意識改革、そして戦術理解を課している姿が見え隠れしているように思える。

ロペス・カロが良い監督かどうかを判断するには時期尚早かもしれない。だが、彼によってチームは確実にいい方向に導かれているように思う。一時はルシェンブルゴの方がマシだという意見もあったが、今のチームの状態はロペス・カロの堅実な仕事ぶりを物語っている。

3. システムの変更
ロペス・カロの採用するシステムと、ルシェンブルゴ時代のそれとは全く異なる。

ルシェンブルゴの採用したシステムは4-1-3-2だった。だが、彼に言わせればそれは守備用なフォーメーションであって、攻撃用のフォーメーションは4-2-2-2とのことだった。この時ポジションを一つ下げるのはベッカムである。

即ち、守備の専門家であるMFグラベセンとパサーのベッカムのコンビでボールを奪い、ベッカムがロングフィードで2トップに正確なパスを送ってカウンター、というのがこのルシェンブルゴ式フォーメーションの武器である。

「2-2-2」の部分は縦に正方形が二つできる形、というのがルシェンブルゴ式。となると、当然ウイング的なポジションに選手を置かないことになる。(ちなみにウイングとはサイドに開いて待ち、サイドの深い位置に切り込んでセンタリングを出す役割のことである。)

ウイングを使わないこと自体に問題は無い。

例えば、バルセロナのシステムは伝統の4-3-3なのだが、左FWのロナウジーニョと右FWのジュリーはウイングではない。彼らはややサイド目に開いて待つが、ボールをもらうと必ず中に切り込んでゴールに向かう。そのままコーナーフラッグ付近まで走り込むウイングとはその点が違う。

3トップの攻撃意識がセンターに絞られることで、必然的に相手のディフェンスの意識はセンターに集中する。穴の開いたサイドをサイドバックがオーバーラップして深く切り込む。こうして相手の守備意識の裏をかいて厚みのある攻撃を実現する。

要は何が言いたいのかというと、ウイングはいなくてもサイドは使う必要がある、ということだ。

ところが、ルシェンブルゴのレアル・マドリーはこのサイドを効果的に使わなければならないはずの両サイドバック、即ちロベルト・カルロスとミチェル・サルガドがほとんど機能していなかった。

先にも書いたが、サイドバックの攻撃参加は相手の守備意識の裏をかけるから効果的なのである。では何故裏をかけるのか。それは、「普段引いているプレイヤー」が不意打ち的に攻撃参加するからだ。

しかし、ロベルト・カルロスとミチェル・サルガドは守備意識が欠如していて、最初からあがりっぱなしなのだ。これでは相手の裏をかけるわけがない。実質、ルシェンブルゴのレアル・マドリーでうまくサイドを利用していたのはロビーニョだけだった。

バカの一つ覚えのように中央突破しか攻撃方法がないようでは、得点力は当然落ちる。それでもある程度点がとれていたのは、レアル・マドリーというスター軍団の個人技のなせる業である。

ルシェンブルゴのレアル・マドリーは守備も破綻していた。両サイドバックがあがりっぱなしのおかげで、レアル・マドリーのサイドには大穴が開いている。ここにスルーパスを通されると、カヴァーリングできずにカウンターの餌食となる。

ではロペス・カロのレアル・マドリーはどうか。

ロペス・カロは4-1-4-1というシステムを採用している。ルシェンブルゴのシステムと大きく違うのは、ウイングをおいていることである。右サイドはベッカムなので、コーナーフラッグ付近まで切り込む事はない(ベッカムにはロングフィードのアーリークロスがあるので切り込む必要がない)が、左サイドのロビーニョは完全なウイングである。

このシステムにおいて、ロビーニョの存在は非常に重要である。普段はサイドに流れてウイングを演じ、ここぞという時には自らFWと連携して中央突破を図る。最近の彼はこの大役を見事に演じきっている。

1トップを採用する上で重要なのは、FWを孤立させないことだ。その点、トップ下に入っているジダンとグティは天才的なパサーであると同時に自らシュートも狙える攻撃的なプレーヤーのため、この上ない適材と言える。

ロベルト・カルロスは相変わらずだが、シシーニョの加入はプラスだ。彼のサイドバックとしての攻撃力は恐らくリーガナンバーワンである。彼のオーバーラップはサルガドのそれとは迫力がまるで違う。

左サイドバックについては移籍が噂されているアシュリー・コールに期待するとしよう。

そんなロペス・カロのシステムだが、いいところばかりではない。1ボランチの危険性は指摘しておかなければならないだろう。

1ボランチは負荷が大きく、スタミナの消費が激しい上、運動量が落ちると全く機能しなくなる。安定した守備力を得るには、一列上の選手、即ちジダンとグティのフォローが必要不可欠である。ところが、ご存知の通りジダンにしろ、グティにしろ攻撃的なプレイヤーで、守備は得意ではない。

エルゲラもグラベセンも非常に有能な守備的MFだが、さすがにフォローがないと抑えきれないだろう。しかし、バイタルエリアをいいように利用されないためにも、彼らには頑張ってもらわなければならない。

或いはジダンがデコで、グティがランパードだったらこのシステムの穴はなくなるかもしれない。私が先にシャビ・アロンソの獲得を期待したのも、そこに理由がある。だが、ジダンもグティも攻撃力増強にはかかせない天才プレイヤーなので、その辺りをどこで妥協するのかはロペス・カロ次第だ。
[PR]
by testarossa7537 | 2006-02-03 19:36 | サッカー


<< レアル・マドリー×エスパニョー... F1 ルノーが新車を発表 >>